アートピアノ ブログ~art piano’s blog~

ピアノ修理会社の3代目 ピアノ修理やオルガン修理の様子をお伝えします。

UP ディアパソン No132 オーバーホール ④

ディアパソン No132
今回は鍵盤の修理について書いていこうと思います。
 
このピアノはアップライトピアノですが、象牙鍵盤でしかも一つの鍵盤に2枚の象牙が貼られている”二枚象牙”です。
象牙の鍵盤は黄色く変色しているものがほとんどです。これは弾いていくと人間の皮脂や汗が鍵盤に吸着され、それが参加して黄色くなっていきます。
お父さんの白いワイシャツのエリが黄色いのと一緒ですね(笑
二枚象牙なのですが、当時これを貼った職人さんの技術は本当にすごくて、よ~~く見ないと継ぎ目が分かりません!浮きなども有りませんでした。
今回はこれを漂白して再度研磨し、キレイに仕上げていきました。
 
木口についているのはセルロイドで、アクリル製のものに交換です!
また、鍵盤のキャプスタンボタンを固定している木の台座が接着剤きれで外れていました!手で取れます💦
これも再度接着していきます
あとは、フロントブッシングクロスとバランスブッシングクロスを交換します。
 
 

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作業前の鍵盤

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木口を外していきます。

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キャプスタンボタンはずれ!

 

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ブッシングクロスを張り付けています。

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鍵盤は一つ一つ研磨していきます!一生懸命、磨ります!

240⇒400⇒800⇒1200⇒2000⇒3000#

ヤスリの番手を徐々に上げて・・・

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バフの研磨後はピカピカ🌟

 

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完成!

 

UP ディアパソン No132 オーバーホール ③

ディアパソンNo132 

 

今度は内部機構、アクションの修理を進めていきます!!

このアクションも接着剤がきれているようで(ユリア樹脂かは不明・・・ニカワかも)

ウィペンのヒール部分が剥がれていたり、フレンジ(アクションの可動の軸となる部分)が接ぎ木の部分で割れていたりしました。

 

やり方としては、このアクションを丸ごと新しいものに交換するという方法もあるのですが、ディアパソンは今は無いメーカーなので、新品となると他社の既製品ということになります。動作はするのですが、微妙な寸法が変化する可能性がありますし、特注で作るとなるとまた費用がかかり、お客さんの負担にも・・・

 

アクションを見ると、バットスキンなどはとても質の良いもの(滑らか)が使用されており、使えるものもありますので、今回はこのアクションを修理、整備して使用することにしました!!

もう完了している修理なのですが、今振り返ったら結構大変でした💦

 

ザーッと行った作業を列挙していきます

 

・バットフレンジセンターピン交換

・バットフェルト交換

・ハンマー交換⇒アベル社製ハンマー

・ブライドルテープ交換

・バットスプリング交換

・フレンジコード交換

・ウィペンヒールの再接着

・ウイペンヒールクロスの貼替

・ウイペンフレンジセンターピン交換

・ジャックスプリング交換

・ジャックフレンジセンターピン交換

・ダンパーヒールクロス交換

・ダンパーフェルト交換

・ダンパースプリング交換

・ダンパーフレンジ交換

その他、細かいフェルトやクロスを交換しています

 

あと、地味に時間がかかるのが各パーツの汚れを落とす作業でブラシやヤスリで削って綺麗にします。

 

け、結構作業しましたね・・・こういう作業を88キー(ダンパーは別)分繰り返してきたと思うと、よく頑張りました(自分)

 

ですが、動作も問題なく、しっかした修理ができたので、安心して客様にお返しできると思います。

写真です

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古いハンマー

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元のハンマーを外していきます。今回はヘッドだけを交換。シャンクの先端の処理が成功のカギです!しっかりニカワを落とし、コレットでつぶして硬さを調整します

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植え込みの作業です。いつも緊張します

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ヒールが外れています

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接着!!ここはボンドで

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スプリングコードも切れてないですが劣化が進んでウイるのd交換します。スプリングは折れてますf:id:artpiano:20210712221937j:plain

作業前のアクション。

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ジャックスプリングもキレイに取り、処理します

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フレンジの方さを調整

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ブライドルテープを交換します。ここが綺麗だと気持ちいですよね♪

熱を加えて、シャンク抜きを使うとうまく外れます。

 

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ダンパースブリングも曲がっています。交換!!

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スプリングは自作しています

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ダンパーフェルトも交換!!

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UP ディアパソン No132 オーバーホール ②

ディアパソンNO132のオーバーホール

 外装についてです。

外装は前回の記事で書いたように、古い接着剤の接着力が無くなって(接着剤がきれて)半分、バラバラに分解しかかっていました💦

 

私の父が言うには、その昔、浜松のピアノ工場で”ユリア樹脂”という接着剤が積極的に使用された時期があったそうです。

ユリア樹脂は尿素樹脂とも呼ばれ、尿素とホルマリンの反応による熱硬化型の樹脂で、尿素を原料とするので安価だそうです。現在でも合板などの接着剤として使用されています。

父が言うには、ユリア樹脂が出始めた初期のものらしく、これは後に不具合が多数報告され、各ピアノメーカーがひどい目にあったそうです。(今は改善されているとは思いますが・・・)

このディアパソンがそうであるかは分かりませんが、年代的に近いそうです。

 

なので、塗装に入る前に木工作業からスタート!!

これが大変です。

元の塗料を落とすのはいつもの作業として、親板の継ぎ目や化粧板など、いたるところに剥がれや割れが出始めていてそれをいろいろな方法(接着剤やビスを使用)で止めていきます・・・

響板も外れて骨組みだけになったアップライトピアノ

普通の修理ではここまでバラしませんが、別の視点で見れば、ここまでバラされるのは珍しい!

構造とかわかるので貴重で面白いですね♪

 

でもこの木工作業は父がしたのですが、え~~っと時間がかかったそうです

お疲れさまでした🌟

 

ここまでばらされていると、どこのパーツクイズですね

 

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棚板下にある足のパーツ

 

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腕木です

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あちこちのパネル類!

 

 

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響板には補強のためにビスを増やして響棒に固定しました。駒も同様に

 

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響板を支える響棒も止めていきます

 

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骨組だけになりました!

 

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横のパネル 親板

割れていたものも止まりました🎉

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響板はニスで塗装します。テカテカ🌟

 

UP ディアパソン No132 オーバーホール ①

今回は松江市内のお客様よりご依頼を頂いたディアパソンNo132のオーバーホールです!

ディアパソンNo132は日本の誇る名工、大橋幡岩氏による設計で、量産体制に入る前の時期に製造された、いわば古き良き時代のピアノです。木材も無垢板を使用し職人が丁寧に作ったピアノです。

ですが、当社に来たディアパソンには大きな問題が!!

山陰地方の湿気にやられたのか、接着剤が切れてあちこちのパーツが外れて楽器としてはとても不安です💦

実はこのピアノはもう修理が終わっていて、持ち主さんからブログにアップして良いと許可を頂いたので、少しずつ修理の様子を上げていきたいと思います♪

 

修理も終わっているので先にビフォーアフターから⇩

 

【ビフォー】

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カラーはウォールナットの光沢仕上げです

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親板は亀裂が入っており手で外れそう

 

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前パネルにも亀裂が!

 

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天板はすでに外れています💦

 

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鍵盤は象牙と黒檀を使用!豪華なピアノです♪

黄色く変色していますしアクションはステック!

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ウィペンも外れています! 見たときは大変な修理になるなと感じました~

 

【アフター】

 

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外装は全塗装の最終仕上げはサテン仕上げ!

こんなに美しくなりました。元の色よりもかなり明るい色合いになっています。

これは、塗装前の下処理の効果

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内部のアクションも様々手を入れてます。ハンマーの交換やアクションの整備を行いました。

 

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象牙は漂白して再研磨です

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修理の細かいことはこれからアップしていきます

 

ヤマハ 5号オルガン 11個ストップ 61鍵 修理

3月30日
出雲カトリック教会に修理したオルガンをお届けしました🍀
ヤマハの5号 11個ストップで昭和38年ごろの製造です。
今回は内部の修理が主な依頼で、空気袋の張替えや革やフェルトの消耗品交換、リードの調整が主な作業でした。
音を出すのにも袋が穴あきでいきも絶え絶え😅
ストップを開けるためにロッドにつながった革が切れていて音が出ない列があるなどしてましたが、綺麗に修理が完了しました♫
教会で仕上げの作業はイエス様に見守られながら勧めて集中出来ました✨
 
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修理前の外装

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修理前の内部

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汚れやカビがあり、フェルトや革等の消耗品は劣化していました。

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踏板はリノリウムという素材ですが今は手に入りません。

ハープの模様が付いていたのですが、それが見えなくなるほど!とても良く弾かれていたのでしょうか?

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空気袋も大きな穴あき

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古い空気袋を剥がしていきます。

ニカワで接着されているのでアイロンど蒸しタオル

熱と蒸気で攻めます!

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補強のため、大袋にもテープを付けます。

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ラバークロスが貼れてきました

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小袋を貼りあえて、空気袋の貼替は完成!

空気袋についているフェルトは袋の潰れすぎを防ぐためのストッパーです。

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ブッシングクロスも貼替します

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鍵盤はセルロイドで、表面を研磨してきれいになりました。

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リードは真鍮製で錆が発生しています。一次整音の意味も含み、薬液で錆を落としていきます。

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みるみるピカピカに!!🌟

 

 

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バルブもチェックしていきます。

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バネなどの金属類も錆を落として磨いていきます。こういう細かい作業が時間がかかる!

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組立てていきます。

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ストップボタンの革も交換

牛革です

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吊りベルトも新しくして

踏板も絨毯に変更!

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こんな感じで作業を進めました。
教会の皆さんに気に入っていただき、これから毎週のミサで活躍することを祈っております♬

ヤマハ オルガン 5号 11個ストップ 「黒帯」 ⑤

オルガン内部の修理をしていきます。
内部はほこりやカビで汚れており、革やフェルト等が劣化し、ボロボロに崩れたり虫食いがありました。

 

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風車の革は劣化して剥がれていました。
 

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真ん中に見える棒は”ピットマンシャンク”といい、この棒の上に鍵盤が乗ります。鍵盤を抑えると棒が下がって、下についている”バルブ”を開いて、空気の通り道が空きます。その通り道を通って風がリードを通り、音を鳴らします。

各パーツを分解して消耗したパーツの交換や清掃をしていきます。

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音を鳴らすリードは一度抜いて不具合がないかチェックし、清掃していきます。

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出来上がったパーツを組み上げていきます。

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革も新しく張り替えました。

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鍵盤は表面が変色や小傷が目立ちましたので、研磨して仕上げていきます。

 

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美しく仕上がりました。

 

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鍵盤が収まっている”筬(おさ)”に付いているキーピンは錆びていますので、磨いてツルツルに仕上げていきます。基本的な作業ですが、弾く時の抵抗が減りますので重要な作業です。

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ヤマハ オルガン 5号 11個ストップ 「黒帯」 ⑥

長く取り掛かっていた、小倉キリスト教会のオルガン修理が完了しました!!

 

化粧板が剥がれていた譜面台も化粧板を新たに張り替えました。f:id:artpiano:20210226000904j:plain

美しく仕上がりました。装飾が入っていたので、ここの処理がとても大変でした。

f:id:artpiano:20210226000907j:plain外装はポリエステルで塗装した後に、スチールウールで仕上げる”サテン仕上げ”としました。そこからもうひと手間で、チークオイルをその上から塗ることで、深みのある半つや消しで仕上げています。

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写真左側がオイルをひいています。良い艶が出ます。

 

ストップボタンも磨いて美しく輝きました。

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組立てていきます。踏板と空気を抜く小袋をつなぐベルトを交換しています。

 

踏板は絨毯を敷いてこのようなデザインに仕上がりました。元はリノリウムという素材でハープの柄が付いていましたが、現在ではリノリウムは手に入りずらく、同じデザインのものはありません。

新たなデザインですが気に入っていただけると幸いです。

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踏板のベルトも交換します。

 

以下に最終的なくみ上げの状況をアップします。

 

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オルガンも1月10日に無事に納品でき、オルガンが蘇ったと、とても喜んでいただきました♬